2016年6月11日、芸能プロダクションに所属していたモデルの女性(当時20歳)をモデルとして契約しているのにもかかわらず、アダルトビデオの撮影に派遣したという事件が発生し、警察に労働者派遣法違反として事務所社長が逮捕されるという事件が発生しました。派遣業務をめぐっては複雑な契約も絡む影響で、問題が発生しやすく、アダルトビデオへの出演を巡っては、近年では特に悪質な契約、強引な勧誘が問題となっており次第にその実態が明らかになってきました。
今回の事件ではモデル業務をすると称して所属契約をさせ、のちにアダルトビデオへの出演を指示。所属女性がそれを断ると「契約違反だ。断ってしまえば多額の違約金が発生して親にも迷惑がかかる。」などと無理やりにアダルトビデオへの出演を迫っていたようです。
このような同様の事案は過去にも発生してはいたものの、警察に摘発されたようなものは過去5年間をさかのぼっても例はなく、今回の事件は異例のものでした。今回違法として指摘されたのはアダルトビデオへの出演が労働者派遣法に定める「公衆道徳上有害な業務」に当たり、処罰の対象として適用されたためです。しかし、これを適用するのは簡単ではないというのが実情なようです。その理由として、事務所との契約の段階でAV出演を示唆する内容が含まれてた点や、家族や知人にアダルトビデオ出演の事実を知られたくない、見られたくない、という思いが強く、被害を訴えられない状況に合った点があげられます。
実際に、今回の事案では「成人向けのDVDを制作する場合でも出演する」という契約条項が存在しており書類上では女性が承諾したようになってしまっていました。しかし実際には契約の際に十分な説明がなされていなく、所属女性もアダルトビデオへの出演に対する認識がなかったことを鑑みて、摘発に至ったようです。
このような、女性のアダルトビデオの出演に関する被害の報告はここ数年で急増しており、平成24年度以降その数は増え続け、これまでに100件以上の相談が寄せられているそうです。どの相談でも、契約では知らされていなかったアダルトビデオの出演を断ると高額な違約金を請求されたという内容が多く、契約に対する知識の足りないことがこういった問題につながってしまう要因となっているようです。今後、新たな法律をつくるなどの規制が求められますが、同時に、女性もホイホイと勧誘やスカウトについて行ったり、よく確認せずに契約書にサインをしてしまわぬよう、注意喚起が必要となるでしょう。また、トラブルにまきこまれても泣き寝入りせず、警察等に相談をしていくようにしましょう。